
かつて「エレベーター2020年問題」として騒がれた時期がありました。
エレベーター「2020年問題」とは、新設の多かった1990年代の設備が「2020年取替時期を迎えている」という問題です。
エレベーター製造メーカーについて日本国内で見た場合、三菱電機ビルテクノサービス㈱、㈱日立ビルシステム、東芝エレベーター㈱、日本オーチス・エレベーター㈱、フジテック㈱の5社が市場の大半を占めています。
主要メーカーは、製造中止からおおむね20年~25年以上経過したエレベーターの部品供給を打ち切る、と言われています。
エレベーターの耐用年数をみた場合、
・法定償却耐用年数 17年
・主要装置平均耐用年数 20年
・計画耐用年数 25年
という3種類の耐用年数が言われたりします。
保守メンテナンスでの2つの契約形態
「フルメンテナンス」契約と「P・O・G]契約におけるリニューアル推奨年数との関係でみた場合、
「フルメンテナンス」なら25年、「P・O・G」なら20年として、シミュレーションされたりします。
ちなみに、
「フルメンテナンス」は、経年劣化におけるほとんどの部品や修理をカバーする契約タイプです。
部品交換などについてはそのつど請求するタイプが、「P・O・G」(パーツ・オイル・グリースの略)契約です。
では、2025年 エレベーター設備の主な課題と現状について見ていきます。
1.部品供給の終了・調達の難しさ
メーカーが古い機種の保守部品を生産終了することがあり、特に制御装置や駆動部などの主要部品では 供給が途絶えるケースが出ています。
2.リニューアル・更新の必要性と費用の高騰
更新工事価格が、半導体や電子部品等の納期長期化および材料費高騰により、コロナ前の2~3割増、さらに過去数年との比較では倍以上にまで上昇しており、見積から実際発注までの間に再見積が必要になるケースもあります。
3.人手不足と技術者育成の課題
2025年「人材不足問題」により、エレベーター関連企業は従来の経験者重視に留まらず、未経験者採用や教育制度整備、キャリアパス可視化など、人材育成への取り組みに本腰を入れています。対応できる企業とできない企業で大きな差が出ています。
4.最新技術への対応(遠隔監視、安全強化)
IoT/AIを活用した遠隔監視や予知保全システムの導入が進んでいます。古い機種にはこうした通信機能がなく、遠隔から情報収集してメンテナンスに役立てることが困難です。
5.エネルギー効率基準の強化と規制対応
政府による省エネ基準強化が進み、エレベーター側もエネルギー効率の高い機器への更新や省エネ運転技術の導入が求められています。
「エレベーター2020年問題」は、さらに深刻度を増している感があります。